良い商品を作っているのに、なかなか売れない。発信しても、思うように反応がない。そんな悩みを抱える事業者は少なくありません。
完成品の質だけで勝負するのが難しくなった今、注目されているのが「作る過程そのものを見せる」という考え方です。これをプロセスエコノミーと呼びます。
この記事では、プロセスエコノミーの基礎から、なぜ過程を見せると売れるのか、明日から使える実践のステップまでを解説していきます。
プロセスエコノミーとは?

プロセスエコノミーとは、完成した商品やサービス(アウトプット)ではなく、それが出来上がるまでの過程(プロセス)そのものを価値にして、収益や共感につなげる考え方です。
たとえば、新商品が完成してから売り出すのではなく、開発の試行錯誤や失敗、こだわりを完成前から発信していく。その過程に興味を持ったり応援したくなったりした人が、ファンになり、やがてお客様になっていきます。
この言葉は、連続起業家のけんすう氏(古川健介氏)が2020年末にnoteで名付けたのがはじまりです。その後、執筆家の尾原和啓氏が著書『プロセスエコノミー あなたの物語が価値になる』で取り上げ、広く知られるようになりました。
(参照:日経クロストレンド「『プロセスエコノミー』の本質とは 名付け親と著者に聞く」)
対になる言葉が、アウトプットエコノミーです。これは、完成品そのもので価値を生む、従来型の考え方を指します。良いモノを安く作り、うまく届けるという発想です。プロセスエコノミーは、その完成品で差がつきにくくなった時代に出てきた、新しい切り口だと言えます。
なぜ今、過程を見せると売れるのか

では、なぜ過程を見せることが、商品の魅力につながるのでしょうか。背景には、大きく3つの変化があります。それぞれ解説していきます。
- 1. 商品の質で差がつきにくくなった
- 2. モノ消費からコト消費へ変わってきた
- 3. 感情で選ばれ、共感が購入につながる
1. 商品の質で差がつきにくくなった
多くの業界で、商品やサービスの質は高い水準で平準化しています。どの店の料理もおいしく、どの製品もよくできている。そういう時代では、品質の高さだけで他と差をつけるのが難しくなります。
そこで残された差別化の余地が、作り手の考え方や過程です。同じような商品でも、誰がどんな想いで、どんな苦労を経て作ったのかは、一つひとつ違います。その違いこそが、選ばれる理由になります。
2. モノ消費からコト消費へ変わってきた
消費の形も変わってきました。モノを所有すること自体に価値を感じる「モノ消費」から、体験や物語を楽しむ「コト消費」へと、人々の関心が移っています。
商品そのものだけでなく、それが生まれる過程に立ち会う体験にも、価値が見出されるようになりました。
応援したお店が無事オープンする、開発を見守った商品が完成する。その一連の流れ自体が、お客様にとっての楽しみになるのです。
3. 感情で選ばれ、共感が購入につながる

人は、機能やスペックを並べられるよりも、心を動かされたときに行動しやすいものです。先に「いいな」「応援したい」と感じ、その気持ちを後から理由づけして買う。そうした流れは、よく見られます。
過程を見せることは、この感情に直接働きかけます。試行錯誤や失敗を知った人は、その商品に自分ごとのような愛着を持ちます。完成したときには、すでに「買う理由」ができあがっているのです。
プロセスエコノミーとストーリーテリングはどう違う?

過程や物語の話になると、よく似た言葉として「ストーリーテリング」が出てきます。混同しやすいので、ここで整理しておきましょう。
- プロセスエコノミー
過程を見せて人を巻き込み、価値や収益につなげる「戦略」 - ストーリーテリング
物語の形で伝えて、共感や記憶を生む「伝え方の技術」
ざっくり言えば、プロセスエコノミーは「何を見せるか(過程を見せる)」という戦略の話で、ストーリーテリングは「どう伝えるか(物語にして伝える)」という技術の話です。
例えとして、パン屋さんが新商品を出す場面で考えると、違いがはっきりします。
- 例)プロセスエコノミー
新作パンが完成するまでの試作の様子を、毎日SNSで発信していくような取り組みです。粉の配合に悩む姿や、何度も焼き直す過程を見せ、完成前からお客様を巻き込みます。 - 例)ストーリーテリング
そのパンに込めた物語の語り方です。「祖母の味を再現したくて」「先代から受け継いだ味を守りたい一心で、廃業寸前の店を立て直そうと挑んだ」といった背景を物語として伝え、共感を生みます。完成後の商品紹介でも使えますし、過程の発信の中で使うこともできます。
つまり、過程を見せると決めるのがプロセスエコノミー、その過程や背景を物語として魅力的に語るのがストーリーテリングです。
この2つは、対立するものではなく、むしろ組み合わせると強くなります。過程をただ時系列で垂れ流すのではなく、物語として届ける。そうすることで、過程はぐっと魅力的になります。
次の章で、その見せ方を具体的に見ていきましょう。
過程の見せ方:ただの実況にしないために

過程を見せるといっても、作業の様子をそのまま流すだけでは、なかなか人の心には届きません。物語の要素を加えることで、見ている人を引き込めます。
意識したいのは次の3つです。
- 1. 主人公と「なぜやるのか」を示す
- 2. 課題・葛藤・失敗を隠さない
- 3. 読者を巻き込み、一緒に進む
それぞれ解説していきます。
1. 主人公と「なぜやるのか」を示す
物語には主人公が必要です。発信では、作り手であるあなた自身や、チームのメンバーが主人公になります。
そして、なぜこの商品を作るのか、どんな想いで取り組んでいるのかを、はじめに伝えます。この「なぜ」が共感の入り口になります。
何を作っているかより、なぜ作っているかのほうが、人の心を動かすことは多いのです。
2. 課題・葛藤・失敗を隠さない

物語が面白くなるのは、順調なときよりも、壁にぶつかったときです。うまくいかない試作、悩んだ末の決断、思わぬ失敗。こうした場面こそ、見ている人が引き込まれるポイントになります。
完璧な姿だけを見せようとすると、かえって他人事に見えてしまいます。葛藤や失敗を正直に出すことで、応援したいという気持ちが生まれます。
3. 読者を巻き込み、一緒に進む
過程の発信が強いのは、見ている人を当事者にできる点です。
「どちらの色がいいと思いますか」と意見を聞いたり、進み具合を報告したりすることで、読者は一緒に作っている感覚を持ちます。
自分が関わったものには、愛着が湧きます。完成を心待ちにしてくれる人が増えれば、販売やオープンのときに、自然と背中を押してくれる存在になります。
明日からできる実践ステップ

考え方が分かったところで、実際に始めるための手順を整理します。難しく考えず、次の3ステップで進めてみましょう。
- 1. 何を見せて、何を見せないか決める
- 2. 発信の場所を選ぶ
- 3. 販売・オープンへの導線を作る
それぞれ解説していきます。
1. 何を見せて、何を見せないか決める
過程のすべてを見せる必要はありません。発信する前に、見せるものと見せないものを整理しておきます。
こだわりや試行錯誤、想いは積極的に見せたい部分です。
一方で、企業秘密にあたるノウハウや、取引先・顧客の情報など、出すべきでないものもあります。この線引きを最初に決めておくと、安心して続けられます。
2. 発信の場所を選ぶ
次に、どこで発信するかを決めます。日々の進み具合を気軽に届けるならSNS、まとまった想いや背景を伝えるならブログ、資金を集めながら仲間を募るならクラウドファンディングが向いています。
とくに現代では、多くの人がまずSNSで物事を知ります。そのため、SNSで過程を発信して関心を集め、より深く応援したい人をクラウドファンディングへ案内する、という掛け合わせが効果的です。
SNSが「知ってもらう入口」、クラウドファンディングが「応援を形にする受け皿」という役割分担です。それぞれを単独で使うより、つなげて流れを作るほうが、過程への共感を支援や購入に変えやすくなります。
無理にすべてを使う必要はありません。まずはSNSを軸にしながら、自社の商品やお客様の層に合った受け皿を組み合わせて続けるほうが効果的です。
3. 販売・オープンへの導線を作る
過程の発信は、それ自体が目的ではありません。最終的に、販売やオープンにつなげる流れを用意しておきます。
たとえば、発信を見てくれた人に先行案内を送る、予約を受け付ける、オープン日をカウントダウンするといった工夫です。過程で高まった期待を、行動につなげる出口を作っておきましょう。
過程を見せるときの注意点

プロセスエコノミーは効果的な考え方ですが、進め方を誤ると逆効果になることもあります。いくつか気をつけたい点をお伝えします。
まず、リアルさが命だという点です。受けを狙って話を盛ったり、作り込んだ嘘の物語を見せたりすると、後で見抜かれたときに信頼を大きく損ないます。等身大の姿を、正直に出すことが大切です。
次に、続けられる範囲で始めることです。過程の発信は、途中で止まってしまうと、かえって印象が悪くなります。毎日でなくてもよいので、無理のないペースを決めて取り組みましょう。
そして、他者の権利やプライバシーへの配慮も忘れてはいけません。取引先や顧客が映り込む情報を、許可なく出さないよう注意が必要です。
変数と文学のスタンス

変数と文学では、過程を「ただ見せる」だけで終わらせず、物語として設計し、集客や販売までつなげることを大切にしています。
何を、どの順番で、どう見せるのか。どの場所で発信し、どうやって販売やオープンの行動につなげるのか。こうした全体の流れを、お客様の事業に合わせて一緒に組み立てます。
SNSマーケティングをはじめ、Webマーケティング全般を手がけているため、発信から成果までを一貫して伴走できることが強みです。
「過程の発信を始めたいが、何から手をつければいいか分からない」という段階から、お手伝いできます。
まとめ

プロセスエコノミーは、完成品ではなく作る過程を価値にする考え方です。そして、その過程を物語として届けるのがストーリーテリングの技術です。
商品の質で差がつきにくい今、過程を見せることで、売り込まずに共感で選ばれる道がひらけます。大切なのは、リアルな姿を、続けられるペースで届けることです。
新商品の発売や開業を控えている方、発信を集客につなげたい方は、お問い合わせからお気軽にご相談ください。過程を物語に変える発信を、一緒に設計します。



