「自分が本当に気に入ったものだけを、商品にしたい」。事業を営む方なら、一度はこう考えたことがあるのではないでしょうか。
商品そのものも、WebやパッケージなどのDTPデザインも、まず自分が納得できないと前に進めない。その気持ちは、とてもよく分かります。情熱は、事業を動かす大切な原動力です。
ただ、ここで立ち止まって考えたいことがあります。「自分が好き」と「世の中で売れる」は、まったく別の話だということです。
この記事では、なぜ好きと売れるが別物なのか、売れる商品はどう生まれるのか、そして好きを売れる形に変えるにはどうすればよいのかを、変数と文学の視点で解説します。
「自分が気に入るかどうか」で商品を決めていないか

商品開発の現場で、よく見かける光景があります。商品の仕様も、デザインの方向性も、すべて「経営者自身が気に入るかどうか」を基準に決まっていく、という進め方です。
はじめにお伝えしておきたいのですが、自分が熱を入れられること自体は、何も悪くありません。むしろ大前提として、とても大切です。情熱のない商品はどこか中身が薄くなりますし、続けていく力も生まれません。
問題は、その「好き」だけを基準にして、売れるかどうかを置き去りにしてしまうことです。自分の熱量と、市場で売れるかどうかは、一度切り離して考える必要があります。
実際、国の調査でもこの点ははっきり表れています。
2017年版の中小企業白書によると、新しい事業に成功した企業は、成功していない企業に比べて、他社との差別化に向けた分析や、販売データ・口コミに基づく評価の把握に取り組んでいる割合が高い、と報告されています。
自分の中だけで判断するのではなく、外の市場や競合に目を向けた企業ほど、成果を出しているのです。
(参照:中小企業庁「2017年版 中小企業白書 第2部第3章 新事業展開の重要性」)
「好き」と「売れる」が別物である理由

なぜ、自分の好きと、売れるかどうかは一致しないのでしょうか。
理由は大きく以下の3つです。
- 1. 売れるかどうかを決めるのは、作り手ではなく市場
- 2. 自分の「好き」が、お客様の「ほしい」と一致するとは限らない
- 3. お金が生まれるのは、誰かの課題を解決したときだけ
それぞれ解説していきます。
1. 売れるかどうかを決めるのは、作り手ではなく市場
どれだけ自分が惚れ込んだ商品でも、買うかどうかを決めるのは、作り手ではなくお客様です。市場が「いらない」と判断すれば、その商品は売れません。
作り手の満足度と、市場の評価は、別々のものさしで測られます。自分が100点をつけた商品が、市場では受け入れられない。
逆に、自分ではそこそこのつもりが、思いがけず売れる。こうしたずれは、珍しいことではありません。
2. 自分の「好き」が、お客様の「ほしい」と一致するとは限らない
経営者の「好き」は、その人自身の価値観や好みから生まれます。一方で、お客様の「ほしい」は、お客様自身の悩みや欲求から生まれます。この2つは、出発点がそもそも違います。
たとえば、デザインの好みもそうです。経営者が「洗練されていて格好いい」と感じるデザインが、狙っているお客様の層には「とっつきにくい」と映ることもあります。
自分の感覚を、お客様の感覚と同じだと思い込むと、ここでずれが生まれます。
3. お金が生まれるのは、誰かの課題を解決したときだけ
商売の基本に立ち返ると、お金が生まれる瞬間は、いつも決まっています。それは誰かの困りごとや、誰かの「こうなりたい」を解決したときです。
つまり、商品やサービスは、お客様の課題を解決する手段です。作り手の自己表現が主役になってしまうと、この「誰かの課題を解決する」という本来の目的から、少しずつずれていきます。
好きを追いかけるあまり、肝心のお客様が置き去りになっていないか。ここは常に確認したいところです。
売れる商品は「市場から逆算」して生まれる

では、売れる商品は、どのように生まれるのでしょうか。答えは、自分の好みから出発するのではなく、市場から逆算することです。
具体的には、以下の3つを順番に見ていきます。
- 1. 市場規模を見る(そもそも需要がある場所か)
- 2. 競合を見る(誰が、どう戦っているか)
- 3. 自分が入る隙と、勝てる要素を見る(差別化できるか)
それぞれ解説していきます。
1. 市場規模を見る(そもそも需要がある場所か)

まず確認すべきは、そこに需要があるのか、市場の大きさはどれくらいか、という点です。どれだけよい商品でも、ほしい人がほとんどいない場所では、売上は伸びません。
逆に、市場が小さくても、自分が満足できる範囲で続けたいなら、それも一つの選び方です。大切なのは、自分が踏み込もうとしている市場の大きさを、はじめに把握しておくことです。
規模を知らないまま走り出すと、後から「思ったより売れない」と気づくことになります。
2. 競合を見る(誰が、どう戦っているか)
次に見るのが、競合の存在です。同じ市場で、すでに誰が、どんな商品を、どんな価格で売っているのか。ここを知らずに参入すると、知らないうちに強い相手と真正面からぶつかってしまいます。
競合を調べることは、相手を恐れるためではありません。相手がやっていないこと、満たせていないお客様の不満を見つけるためです。そこにこそ、自分の商品が入り込む余地があります。
3. 自分が入る隙と、勝てる要素を見る(差別化できるか)
市場と競合が見えたら、最後に考えるのが、自分が入り込む隙はあるか、勝てる要素は何か、という点です。すでにある商品と同じものを、同じように出しても、お客様が乗り換える理由がありません。
価格なのか、品質なのか、独自の世界観なのか。何か一つでも、お客様が選ぶ理由になる強みが要ります。この差別化の軸が定まって、はじめて市場で戦えるようになります。
「好き」だけで突っ走ると、この3つの確認をすべて飛ばしてしまうことになります。市場規模も競合も差別化も見ないまま、自分の感覚だけで作り始める。これが、独りよがりな商品づくりの正体です。
提案を「自分好みじゃない」で却下していないか

もう一つ、注意したい場面があります。専門家やスタッフからの提案を、「自分好みではない」という理由だけで却下してしまうケースです。
「この商品なら、こういうお客様を狙うのがよい」「このデザインのほうが、その層には響く」
こうした提案に対して、「いや、それは自分の好みと違う」「なんとなく違う気がする」と退けてしまう。こうした進め方をする方ほど、売れずに苦しむ傾向があります。
もちろん、提案がすべて正しいとは限りません。最終的に決めるのは経営者自身です。ただ、却下する前に、一度だけ考えてみてほしいことがあります。
その提案は、「誰に向けて」出されたものなのか、という視点です。多くの場合、プロの提案は自分の好みではなく、狙うべきお客様を見て組み立てられています。
「自分好みかどうか」で判断する前に、「狙うお客様にとってどうか」で判断する。この視点の切り替えができるかどうかで、結果は大きく変わります。
情熱と売れるは両立できる

ここまで読んで、「では、自分の好きは諦めるしかないのか」と感じた方もいるかもしれませんが、実はそうではありません。
好きを捨てる必要はまったくないのです。大事なのは順番です。先に市場を見て、需要のある場所と勝てる切り口を見つける。そのうえで、そこに自分の情熱を乗せていく。
この順番なら、好きと売れるは両立できます。
言いかえると、自分の「好き」を、市場に「売れる」形へと翻訳する作業です。この翻訳こそが、マーケティングの役割だと言えます。情熱という熱源はそのままに、それを届く形に整えていくのです。
自己満足で終わらせるのか、それとも誰かに価値を届けるために情熱を使うのか。同じ「好き」でも、向ける方向ひとつで、結果はまるで変わってきます。
変数と文学のスタンス

変数と文学は、経営者の情熱を否定しません。むしろ、その熱量こそが事業の核になると考えています。大切にしているのは、その熱を、売れる形へと翻訳するお手伝いをすることです。
市場規模はどうか、競合はどう戦っているか、狙うべきお客様は誰か。こうした視点を一緒に見ながら、好きと売れるが両立する地点を探していきます。
データ分析で市場と競合を読み解き、その先の商品設計や打ち出し方まで、伴走します。医療・美容・小売・D2C・採用まで、幅広い業種で数字を動かしてきた知見も強みです。
「作りたいものはあるが、売れるか不安だ」「いい商品のはずなのに売れない」という段階からのご相談も歓迎しています。
まとめ

自分が気に入った商品が、そのまま売れるとは限りません。情熱は事業の大前提ですが、市場規模や競合、勝ち筋を見ないまま「好き」だけで突き進むと、最終的に苦しむのは経営者自身です。
売れる商品は、自分の好みからではなく、市場から逆算して生まれます。そのうえで、自分の情熱を乗せていく。好きを、売れる形に翻訳する。この順番を間違えなければ、情熱と成果は両立できます。
商品が売れずに悩んでいる、作りたいものを売れる形にしたい、という方は、お問い合わせからお気軽にご相談ください。変数と文学が、市場から逆算した商品づくりをご提案します。



