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デザインの著作権はデザイナー?依頼者?発注前に知るべき権利とデータの話

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ロゴやウェブサイトのデザインを発注して、きちんとお金を払った。それなのに、著作権はデザイナーのまま。編集できる元データをお願いしたら、別料金だと言われた。

「お金を払って作ってもらったのに、なぜ?」と、モヤモヤした経験はないでしょうか。

実はこれ、デザイン業界では珍しくない話です。理由を知れば、多くが納得できる仕組みになっています。

この記事では、著作権の考え方と元データの扱いを整理し、発注前に確認しておきたいことまで解説していきます。

「お金を払ったのに著作権はこちらにない」はよくある話

打ち合わせでデザインの見本についてやりとりしている様子

デザインを発注した事業者が、あとになって戸惑いやすいポイントが2つあります。

  • 著作権
    制作費を払ったのに、著作権はデザイナー側に残っている
  • 編集データ
    納品されたのは画像データだけで、編集できる元データはもらえない(または別料金)

どちらも「お金を払ったのだから、全部こちらのものになるはず」という感覚とのズレから生まれます。発注者の立場では当然の疑問です。

ところが、デザイナーや制作会社の側からすると、これはむしろ業界の標準的な対応にすぎません。どちらが正しい、間違っているという話ではなく、お互いの前提がずれているだけなのです。

まずは、その背景にある著作権の仕組みから見ていきましょう。

そもそも著作権とは

COPYRIGHTの文字が入ったサイコロの画像

著作権と聞くと一つの権利のように思えますが、実は性質の違う2種類の権利に分かれています。さらに、その権利が「いつ」「誰に」発生するかにも、知っておきたいルールがあります。

次の3つを順番に見ていきましょう。

  • 1. 著作権(財産権)…譲渡できる権利
  • 2. 著作者人格権…譲渡できない権利
  • 3. 著作権は「作った人」に自動で発生する

それぞれ解説していきます。

1. 著作権(財産権):譲渡できる権利

一般に「著作権」と呼ばれるのは、著作物を独占的に利用できる財産的な権利です。コピーする、改変する、公開するといった利用に関わる権利の集まりで、お金に換えられる財産として扱われます。

この財産権としての著作権は、その一部または全部を他人に譲渡できます。土地や建物を売買するように、契約によって持ち主を移せる権利です。
(参照:著作権情報センター「著作者にはどんな権利がある?」

2. 著作者人格権:譲渡できない権利

もう一つが著作者人格権です。これは、作った人の精神的な利益を守る権利で、勝手に改変されない権利(同一性保持権)や、名前の表示を決める権利(氏名表示権)などが含まれます。

著作者人格権の大きな特徴は、著作者だけが持つことができ、他人に譲渡したり相続したりできない点です。財産権としての著作権をすべて譲渡したとしても、この著作者人格権は作った本人に残り続けます。
(参照:文化庁「令和6年度版 著作権テキスト」

3. 著作権は「作った人」に自動で発生する

著作権は、登録などの手続きをしなくても、著作物をつくった時点で自動的に発生します。そして最初の持ち主は、あくまで「作った人」です。
(参照:文化庁「令和6年度版 著作権テキスト」

つまり、デザインを発注してデザイナーが制作した場合、その著作権はまずデザイナー側に生まれます。

発注してお金を払ったからといって、自動的に発注者のものになるわけではありません。ここが、すれ違いの出発点です。

なぜ「お金を払っても著作権が渡らない」のか

危険マークで危険を表している画像

著作権が最初にデザイナーに発生することは分かりました。では、お金を払ってもそれが移らないのはなぜでしょうか。

ポイントは、制作費が何の対価なのか、という点です。多くの場合、制作費は「デザインを作る作業」と「それを使う許可」に対して支払われます。著作権そのものを買い取る対価とは限らないのです。

実際、ホームページ制作やロゴ制作の多くは、著作権を譲渡するのではなく、利用許諾という形をとっています。

著作権はデザイナー側に残したまま、発注者は「自社のサイトやロゴとして使う許可」を得る、という関係です。
(参考:グリーンリーフ法律事務所「著作権と著作者人格権の違い」

著作権そのものを完全に譲り受けたい場合は、別途その契約を結び、追加の費用が発生することが一般的です。これは、デザイナーが不当に出し惜しみしているわけではありません。

著作権という財産を手放すかどうかは、料金とセットで決まる、という自然な仕組みなのです。

なお、契約で「すべての著作権を譲渡する」と決める場合でも、ひとつ注意点があります。日本の著作権法では、譲渡の対象として27条・28条の権利をはっきり挙げておかないと、改変などに関わるこれらの権利は譲渡した側に残ると推定されます。

完全に譲り受けるには、著作権法27条・28条の権利を含む、といった形で契約に明記する必要があります。
(参照:e-Gov法令検索「著作権法」第61条

編集データ(元データ)をもらえないのはなぜ

DESIGNの文字が入ったホワイトボードの画像

もう一つのモヤモヤ、編集データの話に移ります。こちらは著作権とは別の、商習慣に関わる話です。法律で決まっているというより、業界の取引慣行として理解するのが正確です。

デザインの納品では、完成した画像データ(jpgやpng、pdfなど)だけが渡され、編集できる元データ(IllustratorのaiファイルやPhotoshopのpsdファイルなど)は含まれないことがよくあります。

元データが欲しい場合は別料金、という料金設計も一般的です。これにはいくつかの理由があり、背景を知ると納得しやすくなります。

  • 元データは制作のノウハウそのもの
    レイヤーの組み方や作り込みには、デザイナーの技術や工夫が詰まっている
  • 意図しない改変を防ぐため
    元データがあると自由に改変でき、デザインの品質や一貫性が崩れる場合がある
  • 修正は依頼してもらう前提
    その後の修正対応も含めて、継続的な仕事として設計されていることが多い

こうした理由から、元データの引き渡しは「追加のサービス」と位置づけられ、別料金になることが多いのです。

これも、出し惜しみというより、ノウハウや今後の関係まで含めた料金の考え方だと捉えると分かりやすくなります。

もちろん、最初から元データの引き渡し込みで契約することもできます。大切なのは、どこまでが納品物に含まれるのかを、発注前にはっきりさせておくことです。

納品されたデザインを、AIで勝手に改変したらどうなる?

パソコンの前で考えている女性の画像

最近増えているのが、納品されたロゴやデザインを、発注者自身が画像生成AIなどのツールで加工・改変するケースです。色を変える、要素を足す、雰囲気を作り替えるといった編集が、手軽にできるようになりました。ただ、これには権利の面で注意が必要です。

結論からお伝えすると、AIを使うかどうかにかかわらず、納品されたデザインを勝手に改変する行為は、契約の内容によっては著作権の侵害にあたる可能性があります。

AIツールを使った改変も、手作業での改変と、権利の考え方は同じです。かかわる権利は、大きく2つあります。

  • 1. 翻案権(改変して作り変える権利)
  • 2. 同一性保持権(勝手に改変されない権利)

それぞれ解説していきます。

1. 翻案権:改変して作り変える権利

翻案権とは、著作物に手を加えて、新しい著作物として作り変える権利です。デザインを改変する行為は、この翻案権にかかわります。翻案権は財産権としての著作権の一つで、譲渡できる権利です。
(参照:文化庁「令和6年度版 著作権テキスト」

ここで、先に触れた著作権の譲渡の話が関わってきます。多くのデザイン発注は利用許諾どまりで、著作権そのものは譲り受けていません。その場合、改変する権利も手元にないため、勝手にAIで作り変えると、翻案権の侵害にあたる可能性があります。

また、著作権を譲り受けたつもりでも、契約書に「著作権法27条・28条の権利を含む」と明記されていなければ、改変にかかわる権利はデザイナー側に残ると推定されます。この点は、前の章でお伝えしたとおりです。

2. 同一性保持権:勝手に改変されない権利

さらに、もう一つやっかいな権利があります。同一性保持権です。これは、著作者の意に反して著作物を改変されない権利で、著作者人格権の一つです。
(参照:文化庁「令和6年度版 著作権テキスト」

ここが重要な点です。著作者人格権は譲渡できないため、著作権をすべて譲り受けていても、同一性保持権はデザイナー本人に残り続けます。

そのため、たとえ財産権としての著作権を完全に譲り受けていたとしても、デザイナーの意に反する改変をすれば、同一性保持権の侵害にあたる可能性があるのです。

AIで元のデザインの印象を大きく変えるような改変は、とくにこの点が問題になりやすいと言えます。契約で著作者人格権の不行使を取り決めていない限り、リスクが残ります。

トラブルを避けるには、事前の取り決めが大切

納品されたデザインをAIなどで改変したい可能性があるなら、その点を制作前にデザイナーへ伝え、契約で取り決めておくのが安全です。

改変を認めてもらう、著作権を27条・28条を含めて譲り受ける、著作者人格権を行使しないと取り決める、といった対応が考えられます。

逆に言えば、こうした取り決めがないまま、良かれと思ってAIで手を加えると、後から思わぬトラブルに発展しかねません。手軽に改変できる時代だからこそ、事前の確認がこれまで以上に大切になっています。

なお、実際の改変が問題になるかどうかは個別の事情によるため、判断に迷う場合は弁護士など専門家に相談することをおすすめします。

自分で作る場合(Canvaなど)はどうなる?

デザインツールでデザインをしている様子の画像

最近は、事業者自身がCanvaのようなデザインツールで、ロゴやバナーを自作するケースも増えてきました。外注した場合と権利の関係がどう変わるのか、整理しておきましょう。

自分で一からデザインを作れば、その著作権は自分に発生します。当然、編集できる元データも手元にあります。

外注で起きる「著作権が渡らない」「元データがもらえない」というすれ違いは、基本的に起こりません。この手軽さと自由度が、ツールで自作する大きなメリットです。

ただし、Canvaならではの注意点もあります。Canvaの公式情報によると、デザインの中にCanvaライブラリーの素材(写真やイラストなど)を使った場合、その素材の権利は提供者に依存します。

利用者は素材を使うライセンスを持っているだけで、素材そのものの著作権を持っているわけではありません。
(参照:Canvaヘルプセンター「Canvaで作成したデザインの著作権の帰属」

このため、Canvaの素材を使ったデザインには、いくつか気をつけたい点があります。

  • 著作権の譲渡はできない
    素材の権利が提供者にあるため、デザイン全体の著作権を第三者へ完全に譲渡することはできない
  • ロゴの商標登録は原則できない
    Canvaの素材やテンプレートを使ったロゴは、商標登録が認められていない
  • 素材の単体利用や再配布はNG
    素材をそのまま販売したり配布したりする使い方は禁止されている

とくにロゴは、事業の顔として商標登録したい場面が出てきます。Canvaの素材やテンプレートを使ったロゴは商標登録が認められていないため、将来の商標登録まで視野に入れるなら、素材に頼らない形で用意するのが安心です。
(参照:Canva「コンテンツ使用許諾契約」

自作には自作の手軽さがあり、外注には外注の品質や独自性があります。どちらが優れているという話ではなく、用途に合わせて選ぶことが大切です。

発注前に確認しておきたいこと

チェックリストの紙がある画像

ここまでの内容を踏まえ、デザインを外注する前に確認しておきたいポイントを4つにまとめます。契約や見積もりの段階で押さえておくと、後のすれ違いを防げます。

  • 1. 著作権は譲渡されるのか、利用許諾なのか
  • 2. 著作者人格権の扱いはどうなっているか
  • 3. 納品データの形式と、編集データの有無・料金
  • 4. 将来の修正や、他社への引き継ぎは可能か

それぞれ解説していきます。

1. 著作権は譲渡されるのか、利用許諾なのか

まず、納品されるデザインの著作権が、自社に譲渡されるのか、それとも利用許諾なのかを確認します。多くは利用許諾ですが、自社で自由に使いたい範囲によっては、譲渡が必要になる場合もあります。

譲渡を希望する場合は、追加費用がかかるのが一般的です。費用とあわせて、どちらの形にするのかを早めに相談しておきましょう。

2. 著作者人格権の扱いはどうなっているか

著作者人格権は譲渡できないため、契約では「行使しない」という取り決め(不行使特約)を結ぶことがあります。これがあると、後から自社でデザインを調整したいときに、スムーズに進めやすくなります。
(参考:Authense法律事務所「著作権譲渡とは?」

とくにロゴのように、今後さまざまな場面で使い回すデザインでは、この取り決めの有無が後々効いてきます。

3. 納品データの形式と、編集データの有無・料金

電卓の上に「コスト」の文字が入ったサイコロが乗っている画像

納品されるのがどの形式のデータなのか、編集できる元データは含まれるのか、別料金ならいくらかを確認します。

自社で今後こまめに修正したいのか、修正のたびに依頼するのかによって、必要なデータは変わります。運用の仕方をイメージして決めると、無駄がありません。

4. 将来の修正や、他社への引き継ぎは可能か

将来、別の制作者にデザインの修正を頼みたくなる場面もあります。そのとき、データや権利の面で引き継ぎができるのかを、あらかじめ確認しておくと安心です。

引き継ぎの可否は、元データの有無や著作権の扱いと深く関わります。最初の契約時に整理しておくほど、後の選択肢が広がります。

変数と文学のスタンス

変数と文学のロゴマーク

これまで見てきたとおり、著作権が渡らないことも、元データが別料金であることも、業界では合理的な理由のある対応です。

問題が起きるのは、その前提が発注者に共有されないまま話が進んでしまうときです。

変数と文学では、デザイン制作のご相談の段階で、著作権の扱いや納品データの範囲を、できるだけ分かりやすくお伝えすることを大切にしています。

何が譲渡で何が利用許諾なのか、元データはどうするのかを、契約前に整理しておくためです。

また、ゼロから作るデザインだけでなく、お客様がCanvaなどのツールで運用していく前提のデザインにも対応しています。自作と外注のいいところを組み合わせ、その後の運用まで見据えた形をご提案できます。

「あとで揉めない」状態をつくることが、結局はお互いにとって良い関係につながると考えています。

まとめ

COPYRIGHTの文字が入ったサイコロの画像

デザインを発注しても著作権が渡らない、元データが別料金になる。これらは、著作権の仕組みや業界の慣行から見れば、不当なものではありません。

大切なのは、発注前に権利とデータの扱いを確認しておくことです。

著作権は譲渡か利用許諾か、元データは含まれるか、将来の引き継ぎはできるか。ここを押さえておけば、後のすれ違いはぐっと減ります。

なお、個別の契約や具体的なトラブルについては、弁護士など専門家に相談することをおすすめします。

デザインの発注や権利の整理でお悩みの方は、お問い合わせからお気軽にご相談ください。

AUTHOR

Matsumori

Matsumori

代表 / Webディレクター / マーケター

フレンチを中心に10年以上料理人として腕を磨いた異色の経歴を持つ。中小企業・個人事業主のマーケティング課題に、戦略設計から運用・改善まで一気通貫で伴走している。